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とにかく走って逃げたので、のどが乾いてたまりませんでした。
​いろんな建物を通り過ぎて、立ち止まったのはコンビニの前。
ここにも誰もいなかったので、水をたっぷり飲んで少し落ち着く事ができました。

炭酸も大好きなんですが、やめておきました。

あのヘンテコなロボットがまた追いかけてくるかもしれません。

「あぶないとおもったらとにかくにげなさい。あやしいとおもったらそこからはなれなさい」

​いつもいわれていたことを思い出します。

ロボットのことを考えたら、炭酸はやめておこうとおもいました。

ゲップがでで、いざというときうまく走れませんから。

水と食べ物を、飾ってあった肩かけ袋に入れて、また外に出て歩き始めました。

僕は逃げ続けています。

​今、僕にとって逃げることは、生きることと同じ意味になっています。今のところ生きています。

逃げなかった人たちは、今頃どうしているのでしょう?

死んでしまったのかどこかで生きているのかは分かりません。幸せなのかどうかも。

別の世界にいるのかもしれません。この世界には多分、逃げた人だけが残っています。

随分前から、大きなところが、「言われた透りにすれば大丈夫」と大きな声で言っていました。

「大丈夫」を信じた人たちはその場にとどまり、信じなかった人たちはそこから逃げました。

「大丈夫」を信じた人たちは、「大丈夫」と行った人たちと一緒にどこかに行ったのでしょう。

​別の世界に。

今は一人ですが、逃げた他の人たちとどこかで出会うかもしれません。

もし出会ったら、新設にしようと思っています。

大きなところから逃げて一人になるととても不安になります。

ずっと泣いている時もありました。他の人たちもきっとそうだと思います。

肩がけ袋は明るいピンク色で、着けているとなんとなく気分も良くなります。

気分が良くなると、少し世界もよく見えます。

​大切なものは、この袋に入れておこうと思います。

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I RobotMoles 
I

Robot

正常なロボットとはとにかく人間の言うことをなんでも聞く機械のことだと思っていました。

説明書にもよく書いてあります。

[「全てのロボット」は、「命令」に「従順」であるように「設定」されているので「安心」

です。]

そういう意味では、あのロボットは完全に異常です。壊れているのです。

止まれと言っても止まらないし、何より勝手に喋り続けていましたから。

異常ほど恐ろしいものはありません。

しかもあのロボットはきっと自分が異常だとはわかっていないでしょうから尚更恐ろしい。

どこにでもいる家庭型ロボットだったと思います。逃げるのに必死でちゃんと見ていませんが。

ただ頭が胴体から外れてバネのようにビョーンとなってました。普通ではありません。

あのロボットについてはそれだけです。とにかく逃げていましたから。

僕を見つけて、追いかけてきたのだと思います。

追いつかれるとどうなるか?僕は急に怖くなって、逃げ出しました。

動くたびにからだじゅうから変な音をだしながら、喋り続けていました。

歩くよりももう少しだけ速いスピードで、ロボットは僕の方へ向かってきました。

もうだいぶ遠くに離れたと思いますが、またいつやってくるかわかりません。

もっと離れた方がいいかもしれません。あの音の声が聞こえたら要注意です。

別の何かを見つけてそっちに行ってくれたらいいのに。

何を喋っていたかは分かりません。とぎれとぎれでよく聞き取れませんでした。

おぼえているのは、それぐらいです。

ロボットのなのにすごい必死な感じがしたなぁ、と後々ちょっと思ったくらいです。

 

マッ

 ッテ

   テ

  ケテ

 ッテ

タス テ

 スケテ

マッ

 ッテ

タ ケテ

 ス テ

 ッテ

Moles

信じてくれないかもしれませんが、僕は出会うことができたのです。

モグラは道端にひっくり返って死んでいるようでした。ピクリとも動きません。

そんな風にモグラが見つかること自体、とても珍しい事なのです。

地下にはたくさんいるらしいですが。随分昔から。人間がいる前からずっと。

いろんな絵本や映画にも出てきます。モグラが神様のアニメもありました。

この世界で起こるいろんなことを、モグラは全て知っていると言う人もいます。

本当かどうかは分かりませんが、地下にいるモグラたちをちゃんと見た人はいません。

地中で何をしているのか、はっきりとした事はなにも分かっていません。

モグラたちは色々なことを感じる能力がとても高いらしく、ちょっとでも異変を感じると

スイスイと土の中を泳ぐようにどこかに行ってしまうらしいのです。

だから近づくことも、一緒に過ごすことも出来ません。

いつだったか、モグラたちの生態をショベルロボが調査するのをテレビで見たことがあります。

地中は迷路のようになっていて、ショベルロボがどこに進んでも結局モグラたちに出会うことは

ありませんでした。ただ、以前住んでいたと思われる巣のようなものが発見されて、そこで何か

​が見つかったらしいのですが、現在調査中で詳しい事は何もわからないと言う事でした。

あのとき僕はテレビを見ながら、モグラたちは本当はショベルロボのすぐそばにいてずっとその

動きを見張っていたのではないかと思いました。こっちに向かって来ればちょっと横にかわして

スイスイ。向こうに行けばグネグネしながらついていき、さっき掘った穴とつなげたりしてあっ

ちにこっちに近づいたり離れたり。

偉い学者さんや研究者たちもモグラたちの事はわからない事がほとんどだと、ネットやニュース

や新聞などで言っていました。図鑑にも少しのことしか載っていません。

何年かに一回、地上にでたモグラが見つかる時があります。決まってひっくり返って死んでいる

そうです。見つかったモグラは研究所に連れて行枯れます。見つけた人は賞金をもらえるらしい

です。

だから、ひっくり返っているモグラを見つけたとき、すごく興奮したのを憶えています。

モグラがたくさんの人間の中から僕を選んでくれた気がしたのです。

しばらく見とれていましたが、当然このまま置いていく気はないので、袋の中にモグラを入れました。

お金をもらえるかもしれませんから。

触るのは不思議と怖くなくて、体はまるでまだ生きているように柔らかかったのです。図鑑では

足の車輪が赤色ならオス、緑色ならメスと書いてあったと思うので、きっとこのモグラはメスなの

だとその時思いました。

歩いている時、よく袋の中のモグラに話しかけました。どこから来たのか、いつも何をしているの

か、こんな世界になることを本当は知っていたのか、これから僕はどうすればいいのかなどなど。

ずっと喋りかけていました。モグラはじっとしたままでした。

話しかける話しかけるときに、初めは「ねえ」とか「モグラさん」とか呼んでいましたが、喋って

いると段々と親しくなってくる感じがして「ハッピー」という名前をつけることにしました。

いつの間にか、ハッピーは僕の唯一の友人になっていました。

袋の中のハッピーは、いつでも僕の話をジッと聞いてくれました。

いつまで経っても腐らずにジッとしていました。

あるとき僕は、ハッピーは死んでいるのではなくて、ただ動かないだけで実は生きているんだと気

づきました。絶対にそうだと思ったのです。

だから動かないでいるけど、僕の話もちゃんと聞いてくれているんだと。

きっとモグラたちは地上に出ると生きていけないので、ピタッと自分の時間をとめることができる

ようになっているんだと思います。だから、地面を掘ってハッピーを土の中に戻してあげると、あ

っという間に動き出して地中に戻っていくはずです。

そうした方がいいのは分かっています。いずれそうしようとも思っています。

ただもう少しだけは、僕と一緒にいてほしいとも思っています。

ハッピー以外に僕にはまだ友人がいないのです。ハッピーがいなくなるととても寂しくなります。

他のモグラたちがハッピーを助けにくるかもしれません。僕が寝ている時とかに。それはそれでし

ょうがないとも思います。それなら諦めます。でも自分からはまだハッピーとはサヨナラできませ

ん。

​まだたくさんハッピーと話したいことがあるのです。

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